「新春初妄想」とある大富豪の最期
とある大富豪が現代の医療技術では治療できない病に冒された。
そこで、未来の医療技術で治療してもらうべく、自らを冷凍保存してもらう事にした。
それから100年後、医療技術は飛躍的に発展した。
もちろん人体を冷凍保存する技術も。
とある大富豪の人体は、100年前の冷凍技術であり、この時代の解凍技術では蘇生が不可能であることが判明した。
それから更に100年が経過。
解凍技術の進歩により、とある大富豪の解凍も可能になった。
しかし、医療の発展は、彼の病気を治療する程には至っていなかった。
そこからまた100年を費やした。
解凍技術も医療技術も整った。
これで300年の時を超えて、とある大富豪の命が救われる。
そのいよいよという時に、思いがけない問題が発生した。
冷凍保存されてから、すでに300年が経っている。
保存状態は、良好であり、病状も進行していない。
解凍する技術も確立されており、医療技術も進歩した。
しかし問題は、そこではなかった。
まず、解凍蘇生を行い、最新の医療を施すには莫大な費用がかかってしまう。
とある大富豪が眠りについて300年。
その間、彼のビジネスは止まってしまっていたが、資産運用でかろうじて冷凍保存を維持できていた。
それも、もうすぐ底をつくところまで来てしまっている。
そして、もう一つ問題があった。
300年が過ぎ、彼を知る者はすでに誰も居なくなっていた。
とある大富豪を知る者は、誰も居ないため、彼を蘇生するメリットは誰にも無かった。
200年前に確立され、格段に進歩した冷凍保存技術と、100年前に確立された解凍技術によって、すでに蘇生事例は多数存在している。
今更、何のメリットも無い、知る者も居ない、そんな者のためには誰も蘇生を施そうとはしなかった。。。